建築家の仕事(前編)
近頃は皆さんの周りでも建築士さんの知り合いがいる事もそんなに珍しい話ではありませんよね。以前と比べるとかなり身近な存在になった建築士、それでも何をしている人かはあまり知らないものです。もし、皆さんの住まいを建築士に頼むとしたら、彼らがどのような仕事をしているか気になりませんか?
実際、建築士という資格を持った人たちの仕事の種類は勤め先によって、千差万別。建材メーカーの人から、大工さん、住宅メーカーの研究員、学校の先生、役所の公務員など色々な方がそれぞれの仕事の中で、建築士という資格を活かしています。今回はその中でも代表的な建築設計事務所の建築家の仕事を見てみましょう。
建築家の役割
建築家の仕事を一言で表すならば、建築を建てるときの指揮者です。お客さんの理想の建築を実現するために、お客さんと共にコンセプトを作り上げ、それをカタチに表現し、そのカタチ通りに職人さんたちが建てられるように現場でみんなのサポートをする役回りです。
建築は、大勢のプロフェッショナルの力が合わさり初めて実現するものであって、決して1人で作れるものではありません。ですので重要となってくるのは現場でのチームワーク。現場でのマネージメントを行う現場監督さんと密に連絡を取り合い、建築主の理想の建築を建てるために尽力します。
それでは、建築を建てるにあたって、建築家の仕事を10個にまとめましたので1つずつ見ていきましょう。
1、土地探しのお手伝い
まずは、土地探しのお手伝い。不動産屋さんは土地に関する知識は豊富でも、建築の事は専門外です。扱う法律も宅地建物取引業法と建築基準法と全く別物です。そこで不動産屋さんでは聞けないアドバイス、例えば希望の土地に希望通りの大きさや用途で法規上建てられるのかだったり、軟弱地盤の対処や崖地の対処など。土地の視点、建築の視点、双方からアドバイスをもらえると、より安心できますよね。
2、住まいのコンセプト探し
次に建築のコンセプトを決めていきます。お客さんの最も大事にしている本質を見極め、それを軸としその軸に様々な要望を優先順位をつけながら取捨選択し、メインの軸に盛り付けていきます。この作業はとても大事で、例えば要望の取捨選択がなく全部を盛り付けてしまうと混沌とした居心地の悪い住まいになりかねません。この辺りの整理整頓がキチンと出来る事が設計事務所の良いところです。ここさえきちんとしておけば、後は建築主の好みのカタチが如何様なスタイルになろうとも、その事務所らしさが伝わる建築になります。
3、建築関連法規のチェック
建築を建てる時に必要な法規は建築基準法一つではありません。用途や規模によってそれぞれですが、消防法、食品安全法、風営法、埋蔵文化財保護法や、その他東京都安全条例や各地域の条例など、関係する法規を洗いざらい調べます。
大きな建築物になると、申請や届け出をしなくてはならない事柄が10以上に登る事もしばしば。役所に行っても担当の部署が其々違っていて、1日では網羅できないケースもあります。そのそれぞれに対し用意しなければいけない資料や図面は膨大で、かつ申請や届け出の時期が全てバラバラなので、一つでもクリア出来なかったりすると、全体の工期に響いてしまいます。
また建築主が大きな法人ですと、社印をもらうのも日程を要することもあるので、まずは委任状や印鑑のいる書類を整理しお客さんに確認してもらいつつ、近隣住民に対し説明会を開催しながら様々な書類や図面の用意を進めていく。全体の工期が間に合うようにタイミングを上手く調整し、工程に遅延が無いよう細心の注意を払う大事な作業になります。
どうですか?建築家の仕事ってデザインだけではなくて、その前段として色々な作業があるのです。後半は設計作業のお話をしますので、ご興味のある方は引き続きご覧ください。
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