マイホームを建てるときの業者の選び方
タイプ別にみる住宅建築会社の選び方
あるインターネット調査(2019年)によれば、新築住宅の6割弱が「ハウスメーカー」で、4割弱が「工務店」で家をつくったという結果でした。大きく二つに分かれる住宅建築会社ですが、契約に踏み切るために何が決め手になったのでしょうか。ユーザーが感じている双方のメリット、デメリットを取り上げます。
1:ハウスメーカーで家を購入する
CMでもおなじみのハウスメーカーの家は、モデルハウスをもち”わが家”のイメージを家族で共有しやすい特徴があります。全国規模のメーカーから地域に根差したビルダーまで、様々なコンセプトで販売されています。
ハウスメーカーの家を買う3つのメリット
1.大きな会社でつくる安心感
ハウスメーカーは全国展開する企業や、輸入住宅など大きな資本で運営されることが多く、会社としての安心感があります。ユーザーから口コミ情報を収集でき、比較もしやすいことで選ばれています。
2.独自技術・建材をもつ
多くは研究開発費に予算を投じて耐震補強システムの開発など、独自の工法や建材などの規格品を使用し、バラツキの無い技術と着工件数の多さで「ノウハウが豊富」と高評価です。
3.好みのデザインで統一感が出せる
ハウスメーカーの繰り出すモデルは多岐にわたり、好みのデザインタイプを自由に選べるので、全体的な統一感を出しやすいといえます。家づくりの際に、夫は「モダン」、妻は「自然派」のように家族の好みを一つの家の中に全部入れると統一感が失われます。ハウスメーカーの場合は、モデルごとに規格品があり選択肢が絞られるため、結果として満足度は高いとみられます。
ハウスメーカーの家のデメリット
1.オリジナリティーが出せない
ハウスメーカーには、各社のブランドイメージがあります。ですから、街で外観を見ればどのハウスメーカーで建てたかが判ります。オリジナリティーを求めたい場合、ハウスメーカーのブランドイメージは逆効果となります。
2.規格が多く自由度が低い
ハウスメーカーは、研究開発費を投じて技術・建材など規格品を生みだしています。規格品でスケールメリットを得、工期短縮する仕組みなので、それ以外のものは使いにくく自由度が低いです。
3.担当者不在が多く親密にはなりにくい
良い家づくりのためには、担当者と十分な意志疎通をし、イメージ共有することが大切です。ですが、ハウスメーカーの担当者は役割分担されており、設計担当や工事監督と連絡を取り合ったり決済までの系統が複雑で、対応が遅れがちとなります。担当地域の移動や、役職移動もあり、最初に付いた担当者と長いお付き合いができることは少ないようです。
こんな人はハウスメーカーがぴったり!
ハウスメーカーは日々人々の暮らしを快適にするために研究し、各社こだわりの”モデル”を世に送り出しています。ユーザー本人がもつ漠然としたイメージを、ハウスメーカーのコンセプトモデルに重ねやすいので、任せておいてもよくできた家を手に入れることは可能です。自ら手間暇かけず丈夫で長持ちし、快適な暮らしを購入したいという方には、ハウスメーカーの家は優秀です。夫婦共働きで一年中忙しくしているご家庭が増えていることが、ハウスメーカーの躍進につながっています。
2:工務店で家をつくる
工務店に依頼する場合、間取りも内装も外観も、キッチンやトイレなど設備もすべて自らこだわった「オーダーメード」の家づくりが可能です。地域の工務店でつくるメリット・デメリットを取り上げます。
工務店でつくる3つのメリット
1.相談しやすく、アフターフォローが早い
工務店と契約し工事が始まると、現場監督が窓口になります。監督自身が工事金額の積算を行っていることも多く「窓を変更するといくらかかるか」「配管の位置をこう変えるといくらかかるか」ということの目算がつき、その場で解決できることも多いでしょう。決済者までのルートは概して短く、素早く対応してもらえます。
2.設計の自由度が高く職人の腕が確かで仕事が丁寧
工務店では社内設計部か建築士事務所と提携して、設計士と打ち合わせを重ねつつユーザーの意図を反映する独自の間取り(平面図)や外観がわかる図書を作成します。現場に入れば腕のいい職人さんが丁寧に施工してくれるという「顔の見える」サービスを受けられる可能性があります。
3.建築費用が比較的抑えられる
工務店では「研究開発費」や「モデルハウス」などに予算をとっておらず、宣伝広告費も抑えられています。そうした経費はハウスメーカーの見積書に組み入れられていますから、それがない工務店の見積書は通常の場合、実質的な建築工事費となっているはずです。その他にも工務店が独自の仕入れルートを持っていたり、在庫をもっている場合など工務店の建築費用が抑えられる要素は多々あります。
工務店のデメリット
1.請求価格が妥当かわからない
請求金額の妥当性を知るために、2社以上に合い見積もりを出します。見積合わせ、といってそれぞれの項目を見比べると数字の差が見え、妥当な金額を知ることができます。
ただ「追加工事」の場合、値引きなしの”店頭価格”になりがちです。つまり、工事着工してからの設計変更は、費用的に不利なばかりでなく、図面を描き治したり、現場で職人さんたちと設計変更部分を打ち合わせる労力を増やし、結果として総工費が予算オーバーしてしまった!ということになりかねません。工事途中に設計変更する際は、追加料金を請求される「追加工事」になるかどうかをその都度確認することが大切です。
2.工期が長い
工場生産のプレフハブメーカーや規格品を組み立てるシステム工法は工期短縮するために研究されています。工務店で主に行う在来工法の約半分の期間でできあがるモデルもあるので、急いで入居したい場合は有利です。逆にじっくりとこだわりの家をつくりたい場合在来工法は適しています。
3.親しくなりすぎて厳しく言えない
工務店と直接交渉する場合、人間関係を良好に保とうとするあまり、言いたいことを言えなくなるという傾向があります。言うべきことは言いがら、良好な関係を築いて良い家をつくるのはなかなかむつかしいと言えます。
こんな人の家は工務店でつくるべし!
工務店に住宅建築依頼をする場合は特に、工務店への依頼内容と範囲を明確にしておかなくてはなりません。「役所への建築確認申請」は誰が行うのかなど、物件により、会社により契約範囲を選択する作業は多く、あらかじめ「住宅建築の作業スケジュール」の全体像をつかんでおく必要があります。
工務店との金額や日程などの交渉や、工事が滞りなく進んでいるかなどもチェックしなければなりません。「念のための」確認を怠らないことが、良い家づくり成功のカギとなります。ユーザーは自分が意図した設計内容を確認し、金額交渉し、工事が工程表通りに進んでいるか、意図(設計図書)通りに工事が行われているかを確認するなど、家づくり作業は思うより大変な反面、「自分で家をつくった!」という充実感を味わえます。
手間暇をおしまずじっくり取り組みたい場合は、工務店での家づくりが良いでしょう。
建築設計事務所・建築家の役割
設計事務所は工事を直接手掛けるわけではなく、建築確認申請代行や、プランニング、実施設計、工事管理までを担うデザイナー&建築の専門家(法律家)です。基本設計から、工程管理やキチンと施工されているかなどの現場管理まで、多くはひとりの担当者がユーザーの意図を住宅に反映させる仕事をしています。
ユーザーが工事会社と直接交渉することなく、代理人として設計事務所が立つ効果は高く、コストパフォーマンスの高い住宅づくりが可能になります。