住まい造りに役立つ知識

夢の住まいづくりは誰に頼めばいい?(後編)

2020.6.1

今回は前回に引き続き、夢の住まい作りのパートナー、残りの2つ、工務店と建築設計事務所の特徴を見てみましょう

地元に根付いた地域の工務店に頼む


今度は、地元に根付いた工務店に頼んだ場合はどんな様子になるか見てみましょう。今でも地域によっては、このエリアはこの大工さん、あそこのエリアはあの大工さん、担当外の仕事は御法度と言うほど、地域に根付いている事もあります。


そんな昔気質の棟梁が多い地域の工務店。その特色を知るには、昔の家づくりの様子を知る事が必要です。江戸時代辺りの住まいの作られ方は、建築主が地域の大工さんに全てお任せでお願いして、後は棟梁がその人のためを考え建てていきました。
そんな経緯があるので、住宅メーカーが作る住まいが新建材を使った商品的なものであるならば、工務店の作る住宅は昔ながらの自然素材を豊富に使ったハンドメイド的なものと言えるでしょう。


メリットとしては他と比べて面倒見が良い事が挙げられます。ものづくりにプライドを持っている昔ながらの大工さんは、自分の作り出す住宅に愛着を持っているので、作っている最中にもこうした方がいいと思うと、利益度外視で、どんどん追加で家具を作って行ったりして、大工さんの思う完璧なものに仕上げて行く事もあります。ですので、完成時にはとても愛情の伝わる住まいができるケースが多いです。


デメリットとしては、完成するまでは、最終的にどんな家が立つのかわからない場合が多いです。通常、大工さんの家づくりは自分で考え、自分で作ります。そうすると極端な話、図面が頭の中に全て入ってますので、わざわざ紙に起こす必要もないわけです。ですので、人に伝えるという所が弱点の大工さんんもいます。完成した住まいが確かに愛情が感じられる住まいだけれども、思い描いていた住まいと、ちょっと違うかもって事も十分にあり得ます。また、手間と愛情をかけて家づくりをするので、往々にしてスケジュールが延びる事もあります。

建築設計事務所に頼む


最後に設計事務所に頼むケースを見ていきましょう。設計事務所も様々な種類がありますが、住まいを頼む時の窓口になるのは建築設計事務所と呼ばれる意匠を担当する事務所になります。建築設計事務所の特徴として、メリットを3点ほど。


1つ目は住まいを作るにあたって、コンセプトを作り上げる事。
建築の専門家である建築家がお客さんが一番大事にしているものを見極めて、それを軸とし様々な要望に優先順位をつけ、住宅の元となる、いわば住まいのタマゴを作ります。通常はそれをカタチに変換させ、建築を作り上げていきます。タマゴの利点は、もし途中でカタチが少し気に入らなくても、始めに明確なコンセプトとなる軸さえできていれば、その軸に沿ってカタチの表現方法を変えていくので、お客さんの当初描いていた思いが、お客さんの好みに沿ったカタチで表現することが出来ます。


2つ目は、施工会社の提出した見積もりチェック。設計事務所の役割は第3者の目で工務店から提出された工事金額が適正なものかどうかチェックし、そぐわないところがあればお客さんの代わりに適正価格に戻す交渉役にもなります。


3つ目は品質保証のための工事中の監理。設計事務所は工事の最中にも、設計図書通りにデザインや工法が適正な方法で施工しているか監理を行います。ですので、設計施工を1社で行っている会社では外から見えにくい監理を第3者の視点で建築士が見張り役になる事で、より良い住まいに仕上げていきます。

ここからはデメリットとして2点ほど。
1つ目は費用。設計事務所に依頼する場合、工事代金の10%〜15%、もしくは床面積単位で平米3万円ほど、ですので、目安としては坪10万円くらいが設計料となります。これが、工事費以外にかかってきます。ただし、設計施工を1社で行う住宅メーカーや工務店も当然ですが、設計業務をこなす人件費はかかりますので、どこかの費用でお客さんから徴収しないと商売になりません。ですので、どこも多かれ少なかれ設計費は取られています。それが会社を分ける事によって顕在化するかどうかの違いという事になります。


2つ目は入居までに期間がかかります。
一般的な住まいで、工事開始までに半年ほどの設計期間がかかります。お客さんの要望をを叶える心地よい住まいを作るためには、どうしてもそのくらいの期間はかかります。また、大工さんも設計事務所の製作した図面をもとに家を作ると、普段自分の思うままに建てていたのとは勝手が違うので、半年くらいかけてじっくり建てていきます。ですので全体で1年くらいはかかってきます。

最後に、住まいづくりにも様々な選択肢があり、自分の要望に応じて選べる時代になってきています。重要なことは其々の特徴を理解し、自分にあった所に依頼することですね。

前編はこちらから

studio ai architects 塚原信行