住まい造りに役立つ知識

現代の住まいと昔の住まい、地震に強いのはどちら?(前編)

2020.6.1

みなさん、最近ブームになっている古民家に訪れた事はありますか?現代の建物とは違い、柱や梁がとても大きい事に驚いた方も多いのでは?またその大きな躯体に包まれた空間はどことなく懐かしくまた、安心感を与える心地の良い空間ですよね。今回は、現代の住まいと昔の住まい、地震の強さに対してはどちらが強いのかを見ていきましょう。

現代と昔の住まい、地震対策が異なったきっかけとは?

現代の住まいと古民家のような昔の住まい、それぞれ地震に対する考え方が違いますが、実は法律がきっかけだったんです。そこで、日本の住まいに関わる法律の変遷を少し見てみましょう。

大正8年、市街地建築物法という私たちの住まいにも関わる法律が初めて作られました。そこには用途、高さ、容積、防災に対して規定がありました。実は出来た当初には地震対策(構造)に関しての規定はなかったんですね

それが5年後の大正12年、皆さんもご存知の関東大震災が起こってしまったんです。関東では多くの家屋が地震によって崩れ、また火災旋風により多くの方々が犠牲となりました。この教訓を踏まえて大正13年に法改正が起こり、建築の構造の規定がスタートしました。

昭和25年、今まで使われてきた市街地建築物法に代わり、新たに建築基準法が制定されました。現在の住まいにも適用されている建築基準法は戦後に生まれ、アメリカの法律を参考にし、建築を建てる前にチェックする建築確認と建てた後にチェックする完了検査この2つのチェック機能が規定されることで、法律が一段と遵守されることになりました。

日本では、これをきっかけにそれまで大工さんが施していた地震対策とは少し違った仕組みで住宅が建てられるようになり、それがこの現代にも続いているんです。

現代の住まいの地震対策とは?

皆さんが現在住まれている住まいは材木の重なり合っている接合部を様々な金物によって固定しています。小屋組と柱、梁と柱、梁同士、柱と土台、それぞれの躯体がガッチリと金物によって固定され、その躯体がコンクリートで造られた基礎と緊結され地面にしっかりと固定されています。住まいをかっちり固めて地面に固定することで地震の揺れに耐えるという考え方で造られています。

因みにこの規定は、大地震の時に壊れない想定ではなく、倒壊を防ぐ事を目的としています。法律では人命第一ですので、まずは大地震時に損壊しても建物の中から逃る事ができる耐震強度が規定されています。ですので熊本地震のように大きな地震が2回連続で来てしまうと、住まいは倒壊してしまう恐れがあるのです。

前篇では現代の地震対策がどのように生まれ、どのような考え方で対策が取られてきたかを見てみました。後編では引き続き、今度は昔の住まいの地震対策のお話をしますね。

後編はこちらから

studio ai architects 塚原信行